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絶賛発売中の新作『5時過ぎランチ』

明大スポーツ  明大OB芥川賞作家・羽田圭介氏インタビュー(後編)

 
 4月20日、明大OBであり芥川賞作家の羽田圭介さんの新作『5時過ぎランチ』が発売されました。今月1日に発行しました『明大スポーツ新入生歓迎号』で羽田さんを特集しましたが、紙面の都合で入りきらないコメントが多くありました。しかしぜひたくさんの人に読んでいただきたいとの旨を伝えたところ、羽田さんからもご快諾いただけたので、今回、前編後編にわたり掲載させていただくことになりました。後編では大学時代の思い出を語っていただきました。

(前編はこちら

――小説家の羽田さんが、なぜ商学部を選んだのでしょうか。

 「単純に、新人賞を取った時点で自分の生涯の職業は小説家だろうと考えていたからです。出版業界にはもう身を置いているし、文学の勉強は本読めばできることだし、もういいかと思いまして。あとは付属ならではの『商学部の方が実利的でかっけえ』っていう謎のブームがありまして、じゃあ商学部に行こうと。でも入ってみて分かったのは、文学部は記述のテストが多いし、学部に女の子が圧倒的に多いし、文学部に入っとけばよかったのなって(笑)。絶対記述の問題の方が自分にとっては楽だし」

――どんな大学時代を過ごされたのでしょうか。
 「本当に大学時代は遊んでばかりで、お酒も飲みまくりましたね。かばんの中にウイスキーの瓶を忍ばせたりして、一気飲みしてから授業を受けるとか、めちゃくちゃなことをやってました。明大前の『宮古』っていう沖縄料理のお店で瓶ビール一気飲みとかを週2でやったり、誰かの家に泊まったりとかしてたら小説の直しも全然手に付かず、温厚な編集者から怒られました」

――羽田さんも宮古に行っていたんですね。
 「宮古で飲んだ後、みんな帰りたくないからグダグダやってて。酔っぱらった何人かが大きめの声でしゃべっていて、そしたら近くの店のおっさんが『静かにしねえと殺すぞ!』って包丁持ってきた時は結構やばかったなぁ」

――その経験は小説に生かせましたか。
 「具体的には落とし込めていないけど、人間関係の機微とか、そういった形で学生時代の特有の経験としては生かせたと思います。大学は、自分にとって居心地のいいコミュニティに簡単に身を置きやすいと思います。居心地のいい内輪の世界で集まっていると、万能感が芽生える。そこから就活を経て、段々自分が狭いところで調子に乗っていたことを知って、それが剥がされていく感じとか、そういうのを経験できるのが大学時代だと思います。社会に出て一時的にうまくいかなくても、無責任な頃の黄金体験を回想し救われたりもしますし」

――小説家一本にせず大学に通ったのはなぜでしょうか。
 「どうせ小説家でやるんだから、間で何か挟んだほうがいいだろうと思ったんですね。あと大学3年の10月くらいから周りのやつらが就活で『電通が〜』、『テレビ局が〜』とか景気のいいことを言ってて、自分もその祭りに乗っかってみるかと思って就活もしました。就活してみると、変に文章力があるからみんなが落ちるテレビ局でもエントリーシートだけは通っちゃうんですよ。中途半端に2次面接とかで落とされるんで、手間はみんなより増えるんですけどね。あと就活を始めた頃から、就活小説を書こうって決めていたんですよね。だから割と取材ありきで就活をしていたというのもありましたし、大学に通ったのも経験という意味が大きいです」

――明大生へメッセージをお願いします。
 「遊びまくれ! と言いたいです。人生って、自分が思っている以上に遊べないまま進んでいくと思います。学生時代の友達も自分と同じように大人になっていくわけですよね。だから辛気くさい話題とか増えていきます。社会に出て大人になると身の丈を知るんですね。身の丈を知ることには、弊害もある。自分の日常ルーティーンを安定させたり、自分の考えを肯定したいがために他者の意見を受け入れなくなったり、新しいものに興味を持たなくなったりします。それで偏狭な世界にどんどん没入してくんですけど、大学生時代はまだ頭が柔らかくて、生意気ではあっても、根本的には他者を受け入れられる状態にある。大学生の頃は生活なんて関係ないですし、今の自分に何ができるかではなく、自分がしたいことであれば荒唐無稽なことでも純粋に追い掛けることができる。色々なことに興味を持つことは大事だと思いますね。そこに他者を受け入れられる要素があるんです。たとえば、全然良さの分からない小説や音楽、前衛芸術に接して、分かったふりをする。そのうち、本当に良さが分かってくるんですよ。何事に対しても背伸びしたり歩み寄る姿勢は必要です。他者を受け入れる中でしかできないことって、若いうちなら簡単にできる。大学生のうちは、周りのみんなが無条件に若いという尊さは分からないと思いますけど、同世代のみんなが若いうちにできる馬鹿なことやいろんな経験は、学生のうちにしかできない。誰にも気を遣われない時期特有の交友関係や遊びを満喫した方が、後悔ないと思います」

 ◆羽田 圭介(はだ・けいすけ)
1985年東京都生まれ。1998年に明大明治中に入学。2003年『黒冷水』で第40回文藝賞を受賞し小説家デビュー。2008年に明大商学部商学科を卒業。2015年に『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞を受賞して以降、さまざまな業界で活躍している。今回中野キャンパスで取材させていただき、サインを書いていただきました。事務室で飾っていただいているので、興味のある方はぜひご覧ください!


[日野空斗]

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