

スピードスケートな人たちU (3)募る思いを胸に最後のレースへ・吉本圭翼
スケートは高校までで辞めるつもりだった。だが、“一生懸命頑張っている選手”として鈴木総監督の目に止まり、思いもかけず明治への進学をすすめられた。家計は苦しかったが、それでも明治でもう一花咲かせようと、親に無理を言って一大決心で入学を決めた。
人の滑りを真似ることを心掛けてきた。スタート、ストレート、コーナーワーク。時には仲間の滑りを、時には他大の選手の滑りを真似て取り入れた。「色々な滑りをイメージして自分の滑りと結び付けた」。進化を求め、試行錯誤を繰り返し、フォームはこまめに変えていった。
だがその努力も虚しく、報われない日々が続いた。「スケートは理不尽な競技。一筋縄ではいかない」。結果が伴わなかった。周囲の期待を何度も裏切ってしまった。特に2年次から3年次にかけては伸び悩み、「1年間頑張ったのにタイムが一緒だった」と苦心した。飛躍を誓ったラストシーズンも、主務業と就職活動に追われ、満足のいく練習時間を確保できず、「良いタイムが出てない。絶望的だよ」と苦笑い。今季のレースでも芳しい成績は残せていない。もどかしさは誰よりも吉本自身が一番感じていた。
残されたレースはインカレのみ。今季限りでの引退を決めている吉本にとっては、正真正銘最後のレースだ。だがその大一番を前にしても、最後まで景気の良いコメントは聞けなかった。インカレに照準を合わせ調整を施してきてはいるものの、活躍できると言い切るだけの自信がなかった。
そんな吉本に活力を与える出来事が。先日行われたバンクーバー五輪日本代表選考競技会で、本学OBの太田明生選手(平19政経卒・現JR北海道)が500mで2位に輝き、見事に五輪出場を決めたのだ。太田選手は、吉本が1年次の4年生であり、「モラルなどを色々教えてもらった。レースでも応援してもらい、自分の心の支えだった」と慕う先輩だ。だから、「うれしかった」とまるで自分のことのように声を弾ませた。そして、夢の代表入りを決めた気迫の滑りを目の当たりにして、勇気を貰えた気がした。
「今何ができるかが大事」。過去への後悔をバネに、そして先輩からの勇気を胸に、この最後のレースにすべてを懸ける。
◆吉本圭翼 よしもとけいすけ 政経4 八戸商高出 168p・65s
[原昂之]
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